ノンフィクション,とりわけアンダーグラウンドな犯罪ものが好きな方なら,一度はそれらに言及している本の中で見たことがある「半グレ」や「関東連合」といった存在。
最近は「反社」という言葉が使われることも多いですが,根本的には同じで,決して褒められたものではなく,グレーときにはブラックな方法でビジネスをしているものだと認識しています。
今回,情報を整理するためにも,半グレや関東連合などについてわかる本をまとめました。
溝口敦『ヤクザ崩壊 半グレ勃興』など
「半グレ」を知る上で絶対に外せないのがノンフィクション作家・溝口敦さんです。そもそも「半グレ」という言葉は,溝口敦さんが著書『ヤクザ崩壊』の中で定義したと言われています。
そんな溝口敦さんの著書の中で「ヤクザ」という組織が崩れはじめてきており,それに代わって「半グレ」が台頭してきているということがよくわかるのが以下のものです。
- ヤクザ崩壊 半グレ勃興 地殻変動する日本組織犯罪地図
- 溶けていく暴力団
そして,彼らを含む裏社会の人間がどのようなビジネスを行っているのか(いたのか)がわかるのが以下の著作です。
- 詐欺の帝王
- 闇経済の怪物たち~グレービジネスでボロ儲けする人々~
- 危険ドラッグ 半グレの闇稼業
これで,「半グレ」というもののアウトライン,外から中を見ることができます。
ちなみに僕は『詐欺の帝王』や『闇経済の怪物たち』を読んで興味を持ち,そこから深堀りをするように暴力団を含む半グレ関連の書籍を読み漁るようになりました。
また,半グレとは少し逸れますが,ハンナングループのタブーに切り込んだ『食肉の帝王』などもとても面白いので,「裏」が好きな方は一読するのをオススメします。
工藤明男(柴田大輔)『いびつな絆』『破戒の連鎖』『聖域』
続いて,実際に中にいた人たちの本を紹介します。
柴田大輔氏は,元関東連合幹部だった方です。
まず,著作については,関東連合についてよくわかるのは以下の三部作です。
- いびつな絆 関東連合の真実(工藤明男)
- 破戒の連鎖(工藤明男)※
- 聖域 関東連合の金脈とVIPコネクション(柴田大輔)
※『破戒の連鎖』は『破戒』として文庫化されています。
前2作についてはペンネームの工藤明男で執筆されています。このペンネームは「ネットで作り上げられた関東連合の架空の黒幕『工藤明生』のパロディ」と著書『破戒の連鎖』の中で述べています。
この三部作の位置づけは,『聖域』の中の言葉を引用するとわかりやすいでしょう。
- いびつな絆:関東連合を語る刑事事件編
- 破戒の連鎖:関東連合の少年時代の生い立ちを記録した地域社会編
- 聖域:関東連合がどのように歓楽街で成り上がっていったかを記録する経済編
時系列で言うと,2作目『破戒の連鎖』で関東連合の生い立ちがわかり,3作目『聖域』で関東連合の成長がわかり,1作目『いびつな絆』で「六本木クラブ襲撃事件」までの流れがわかります。
『聖域』は,2000年代のベンチャー企業(今は上場企業)の経営者とのつながりもわかります。
また,関東連合についてそれぞれの立ち位置から互いについての意見が見られるのも興味深いポイントです。たとえば,関東連合と決別した柴田大輔氏は各メンバーについて批判的な立場をとっていますし,その相手もまた柴田大輔氏に関して対立するコメントを各著書の中に記しています。
石元太一『不良録』『反証』
メディアに頻繁に出ていたことから,おそらく知名度がもっとも高いのが「関東連合 元リーダー」の肩書で知られる石元太一氏です。著書には『不良記録』『反証』があります。
- 不良記録:関東連合について
- 反証:獄中手記
柴田大輔氏(1979年生まれ)から見ると,石元太一氏(1981年生まれ)は年下であり,ふたりの中にははっきりとした上下関係があるのがわかります。
一方,石元太一氏から見ると,あまり快く思っていなかったのかなという印象を受けます。
こういうのは一方の話だけを聞くとどうしてもバイアスがかかってしまうので,できるだけ双方,そして外側からの意見なども交えて自分の中で咀嚼するのが良いのかなと思っています。
瓜田純士『遺書』
もうひとり,「アウトローブロガー」として知られた瓜田純士氏を紹介します。彼は関東連合の人ではありませんが,近い位置にいたひとりとして,著書『遺書』が発売されています。
ただ,こちらも柴田大輔氏に対して否定的な見方をしている一方,柴田大輔氏も「『遺書』は僕たちのなかでは『うしょ(うそ)』と呼ばれ,馬鹿にされている」などと反論しています。
まとめ
ここまで,半グレ,とりわけ関東連合についてのことがわかる本についてまとめて紹介しました。
分量の割合からもわかるように,まずは概要として外側から溝口敦さんの書籍,次に内側から柴田大輔氏の著作(三部作すべて面白いです),そして情報を補正するためにその周辺の本を読むと,バイアスがかかり過ぎずに比較的なだらかに情報が得られると思います。