『嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか』契約書に書かれた内容を遂行することの重要性

書評

今回は,2004年から2011年まで中日ドラゴンズの監督を務めた落合博満氏について書かれた『嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか』を紹介します。本書は,スポーツ紙の中日ドラゴンズ担当記者だった著者が,選手や球団関係者に取材して書いたノンフィクションです。

落合監督は嫌われていた?

落合監督は,メディアや球団関係者からあまり好かれていませんでした。落合監督はメディアに情報をほとんど流さず,メディアと関係性を構築しなかったからです。また,中日ドラゴンズの親会社も新聞会社のため,メディアに好意的な態度を示さない落合監督はあまりよく思われていなかったようです。

落合監督自身,メディアにたくさん出て球団の人気を上げることよりも,「いちばん大切なのは勝つこと」だと考えていたそうです。勝ち続ければファンもたくさん球場に足を運んでくれて,グッズの販売につながり,野球界が発展していくと考えたようです。

メディアにスターティングメンバーをなかなか公表しなかったり,選手にも「外部への情報漏洩禁止」という規則も作ったというのもすべて「勝つ」ために行っていたことでした。情報が出てしまえば,相手チームが対策を立てやすくなってしまうからです。

この点について,ビジネスにも通ずることがあるのではないかと感じました。企業活動でも重要なのは顧客や株主にしっかり価値を提供していくことが求められます。つまり,利益を継続的に上げていくことが重要いうことです。メディアには取り上げられているけれど実体が追いついていない企業の話を聞くこともあるので,私も改めて「何が本来の目的か」を理解して行動する必要があると感じました。

自ら考えるチーム作りに注力をしていた

落合監督は「自ら考えて行動できるチーム」を作ることに注力をしていたようです。多くを語らず,定位置から選手を眺めていることがほとんどだったようです。そして,突然レギュラーから外されたりするので,監督が何を考えているかわからないと選手たちも思っていたとあります。

アドバイスがあっても本当に一言程度で,ポジションやレギュラーチェンジの意図を深く説明してくれることはほとんどありません。選手たちは最初は困惑していたようですが,落合監督の決断には必ず理由があり,基本的に「毎日試合に出て与えられた職務を行う準備はできているか?」という基本的なことのみを求めていると感じられたようです。

あくまで「業務委託で契約されている野球選手」という立場である以上,「毎日試合に出て活躍する」ことが求められます。それが行われていれば,契約も長く続き,選手生活を長く送ることができると落合監督は考えていたようです。

「プロ野球選手」という不安定な職業であるからこそ,契約書に記載された内容をしっかり把握し実行すべきと選手にも理解してもらい,自分自身もそのように行動していたそうです。そのため,チームが安定的に勝ち,選手が選手生活を円滑に進めていくには,普段の準備や小さな変化に気づき対処していくことに注力されていたようです。

まとめ

落合監督の考え方は普段の仕事に通じることが多くありました。契約書に書かれた内容を遂行していくことが求められていることで,それを達成するために行動をしていくだけという当たり前に聞こえる内容ですが,まだできていない面も多いので,私自身もプロとして行動していきたいと思います。

書名 嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか
著者 鈴木 忠平
出版社 文藝春秋

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