最近,「M&A」というワードを聞く機会が増えました。きっかけとしては,企業の後継者不足が引き金となっているのですが,もう少し詳しくしりたい思い,『ローカルM&A 地方都市中小企業の「価値」と「思い」を次世代につなぐ究極解』という本を読んでみました。M&Aなどが少し気になっている方には,ぴったりな本だと思いますので紹介します。
中小企業の後継者不在問題
日本で行われているM&Aの多くは,未上場の中小企業を対象にしたものがほとんどのようです。理由としては,前述のように後継者不足により事業を売却するニーズが強いからです。
中小企業のオーナーである社長は,心情的に自分の息子や娘に事業を継がせたいと考える人が多いですが,今の時代には息子や娘さんも中々継ぎたいという方は少なくなってきています。子供が親の事業に興味を持てなかったり,事業経営に向いていないという事態は,日本中でかなりの頻度で起きており,一種の社会問題となっています。そのため,たとえ事業が黒字であっても,後継者が見つからないために廃業をする企業も少なくないというのが現在の状況のようです。
ローカルM&Aの特徴・難しさ
未上場の中小企業のM&Aは,市場での株価がないだけに価格査定が難しく,また売り手と買い手のマッチングも困難になるため,専門のM&A業者の仲介を必要とするケースがほとんどです。東京であればM&A仲介会社も多く情報はいくらでも入ってきますが,地方都市となるとまだ情報格差があるのが実情です。
また,ローカル中小企業が行うM&Aは,一般的なM&Aとは異なる特殊性が見られることが多いです。ローカル中小企業の場合,その商圏がローカルエリアであるがゆえに,そこに興味を持つ企業が相対的に少ないというのがあります。また,成長産業であればいいが,そうでないケースがほとんどで中々うまく売却先を見つけることが難しくなっています。
また,借入金が大きな問題となるケースも多いようです。ローカル中小企業の売り手側は,社長が借入金の保証人となっているケースがほとんどで,その連帯保証を解消することがM&Aの目的であることが多いです。そのため,借入金の肩代わりと譲渡価格の合計がその会社の企業価値となってしますので,それに見合うだけの魅力があるかどうかが大きな問題となるケースも多いです。
そのため,ローカルM&Aを成功させるには,手間はかかるが売り手企業に真摯に向き合い,その魅力をしっかり把握した上で最適な買い手を探す努力が必須であるといえます。M&Aとは,お互いに「たった1社に出会えればいい」ものであり,結婚と同じで「本当にこの相手で良いのか」と迷い始めると,なかなか決まらなくなってしまいます。
そこで,仲介会社は売り手企業の中身を熟知するとともに,企業評価やスキームなどをアレンジして,買い手の希望に合うように仕立て上げる必要があり,仲介会社を利用する最大の魅力と言えるでしょう。このようなアナログなカスタマイズをいかにうまくできるかが,地方都市の中小企業M&Aの成否を分けると本書では語られています。
まとめ
今回は,「ローカルM&A 地方都市中小企業の「価値」と「思い」を次世代につなぐ究極解」を紹介しました。今後もローカル企業のM&Aは加速していき,仲介会社が活躍するケースも増えてくるでしょう。まだまだ仲介業自体が,ここ数年で急速に流行りだしたものであるため,課題も多いところはありますが,日本の良い技術を繋いでいけるようなM&Aが増えると良いなと思っています。
書名 | ローカルM&A |
著者 | 小川 潤也 |
出版社 | 日刊現代 |