『LTVの罠』フレームワーク「MAST」を使って,顧客にとって必要な価値を提供する

書評

マーケティングの世界でよく重視されるワードに「LTV(ライフタイムバリュー)」があります。これは,顧客が自社のサービスを利用し始めて終了するまでの期間に,どれだけの利益が得られるかといった指標です。

今回は『LTVの罠』という本を紹介します。表題がLTVというテーマになっておりますが,マーケティングを考える上で重要な思考性が記載されていたので,紹介していきたいと思います。

LTVには2つの視点がある

LTVとは,一般的には,企業視点で顧客から得られる利益で考えられる傾向がありますが,顧客視点で企業から得られる価値の総量でも捉える必要があると本書では語られています。デジタルの接点も活用しながら,中長期のコミュニケーションを通じて価値を提供できます。

デジタルは短期的な売上だけを追う手段ではありません。本書では,LTVの観点だけでは見えない顧客視点の理解が必要であることを説明しています。LTVには,企業が顧客から得られる利益だけでなく,顧客が企業から得られる価値の総量も含まれるということを理解することが必要とのことです。デジタルの接点を活用しつつ,中長期的なコミュニケーションを通じて価値を提供することが必要だと本書では語られています。

フレームワーク「MAST」

本書では,カスタマージャーニー含めて顧客理解の重要性が共通して説かれています。その際に,本書で提唱されている顧客を理解するために使うフレームワーク「MAST」が紹介されています。MASTは以下の4つから構成されています。

  • Meet:出会う・認識してもらう
  • Attraction:引き付ける
  • Sense:顧客の動きを検知する
  • Trade:商売する

MASTを使うことで,顧客がなぜそのタイミングでその行動を取るか,文脈や状況を観察することができます。顧客理解を深めることで,顧客にとって本当に必要な価値を提供することができるようになり,本質的な施策が展開できるようになります。

顧客視点で無駄な投資を減らす

LTVの罠の典型例として「会員プログラム」「会員アプリ」「サブスクリプション」「メディア」といった,顧客を囲い込むための手段を挙げています。いずれも,顧客理解の不足や思い込みから施策として実行されがちですが,費用対効果が低いことも多いようです。

大切なのは,「本当に顧客が望んでいる内容はなにか?」をしっかり解明した上で,会員特典をつけていくべきだということです。そのためには,データ解析が必須となります。もし,自社のマーケティング施策がうまくいっていない場合は,データ解析を見直してみる必要もあるでしょう。作業が大変な分,仕事をやっている感覚になってしまうのもデータ解析の特徴です。顧客理解を深めるための解析を行なっていけると良いでしょう。

まとめ

今回は『LTVの罠』を紹介しました。LTVの深掘りがあまりされていない部分ですが,マーケティングの本質が書かれていて個人的にとても勉強になりました。マーケティングが仕事に関わる方にオススメです。

書名 LTVの罠
著者 垣内 勇威
出版社 日経BP

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