昨今,「人事部門は経営に大きな影響力を与えるポジションだ」とよく聞くようになりました。
しかし,全体的に見れば,重要ポジションのような評価を得られていたり,そのようなパフォーマンスをあげられているという組織は多くありません。私自身も人事に関わる仕事についているので,どうすれば良い影響が組織に出るような取り組みができるか日々考えています。
その中で改めて人事について学んで見ようと思い,今回『日本の人事を科学する 因果推論に基づくデータ活用』という本を紹介をさせていただきます。
データを活用したPDCAが弱い
会社経営においては,様々なデータを活用して意思決定を繰り返しています。当然人事部門もデータに基づいた組織運営をしておりますが,まだ弱いというのが本書の主張するところです。
特に採用や定着の領域においては,「適性検査」や「従業員満足度調査」などさまざまなツールが以前から使われておりますが,「雰囲気」で結論付けされていることも少なくありません。
どうしても,採用時は「適性検査は少し悪いけど実績も人柄も良いから」という理由で採用してしまうこともありますし,採用した後の人材評価も短期視点で判断されがちです。
最近,よく話題に上がる「GAFA」と呼ばれるような企業は,データ活用が進んでおり,各々のポジションで明確な管理がされていることで有名です。実際,国内の企業でも大小関わらず,データを活用できている企業は,改善活動もスムーズに行われ伸びている印象を私も持っています。
また,最近は「HRテック」と言われさまざまなツールが登場してきました。これを機に,中長期の視点をもってデータ活用していくことが人事部門に必要だと言えるでしょう。
なぜデータ活用が進みづらいのか?
なぜ,データ活用が進みづらいのかというと,人事に配属される人に「統計思考」を持った方が少ないというのがあります。日本独自の素晴らしい制度でもありますが,「新卒一括採用」や「終身雇用」というものが「経験や勘に基づいた意思決定」で成り立ってきたことも要因としては大きいでしょう。
データ活用を進めるには「統計や数字に強い人材」を配属していくことは今後必須です。どうしても「営業成績の良い社員」や「第一印象が良い社員」を配属してしまいがちですが,会社はそのような方々だけでは成り立ちません。
通常の会社経営と同じく,「営業が強い人」「分析が強い人」「細かな作業が得意な人」などさまざまな特性をもった方が人事部門にも必要です。長期的に再現性のある組織を今後も作り出していく上では,「人事部門の人事」について深く考えていく必要があるでしょう。
まとめ
「人事部門が重要だ!」ということが叫ばれるようになったのは素晴らしいことだと思います。ただ,データ活用においては他部門に比べて弱いも多いのも事実です。人事部は「採用」だけではなく,「労務」や「教育」などの役割もあります。これらを活かすためにデータ活用にも取り組んでみましょう。
書名 | 日本の人事を科学する 因果推論に基づくデータ活用 |
著者 | 大湾 秀雄 |
出版社 | 日経BP |