沖縄に行くと,夜遊びを楽しむ男性が多いことがわかります。南の島だから開放的な気持ちになるのか,本土とは離れた場所で羽を伸ばせるのか,沖縄の別の顔に性があることは違いありません。
『沖縄と私と娼婦』は,本土返還前の沖縄,とりわけ娼婦や売春など沖縄の別の顔がわかる一冊です。出版されたのは1970年なので,50年も前に書かれていることになります。
著者である佐木隆三さんが沖縄の娼婦にアプローチしたのは,「どう説明すればいいか,実は自分でもわからない」とあります。これは縁もゆかりもないはずなのに沖縄が好きという人ならわかると思います。何を隠そう,僕もそのひとりです(笑)。
佐木隆三さんについては,後年『沖縄アンダーグラウンド』の中でもインタビューが出てきます。こうやって一冊の本を読みながら,関連書籍が連鎖していくのもまた読書の楽しみのひとつです。
娼婦であり続ける限り,国家は決して彼女らを保護しない。利用するだけだ。本土における戦後の売春は,「進駐軍から一般女子を守る」ために組織されたのが主流で,特殊慰安施設協会という名の公娼制度は警察当局の音頭取りによるものだった。
沖縄から感じるどこか塞ぎ込んだ雰囲気は,この防波堤にさせられたという歴史があるからなのかなと感じます(歴史を遡って琉球に薩摩藩が侵攻したときからはじまったのかもしれません)。
本土返還前,沖縄にはAサインバーという米兵が出入りするバーがありました。
米兵が出入りするバー,キャバレー,クラブ,飲食店をAサインと呼ぶが,APPROVE(アプルーブ=認可する)の頭文字が示すとおり,きびしい風俗業施設認可基準が設けられた,その認可証である。
本書では,これらの場所での取材もされています。
著者の佐木隆三(1937-2015)さんはノンフィクション作家です。沖縄に関しての著作では,『沖縄と私と娼婦』のほか,『わが沖縄ノート』もあります。
どうしたって蓋をされやすい「性」というもの。一般世間に求めるのは難しいかもしれませんが,個人的にはきちんと目を開いてみたいと思っています。
書名 | 沖縄と私と娼婦 |
著者 | 佐木隆三 |
出版社 | 合同出版→ちくま文庫 |