『アフターコロナの生存戦略』次の時代の変化を楽しむ指針を見つけよう

書評

『アフターコロナ』。普段なら見向きもしないだろう使い古されたキーワードですが(失礼),意外な人が使ってきたということで,これは読まないわけにはいきません。

アフターコロナの生存戦略 不安定な情勢でも自由に遊び存分に稼ぐための新コンセプト』は,成毛眞さんならではの視点で書かれた一冊です。

「これからの生き方」という至極まっとうな見方から入ってきた方はもちろん,これまで成毛眞さんの著書を読んできた方にとっても,「今はこういうことを考えているんだ」ということがわかります。

 

本書を一言でいうと,「変化を楽しもう」です。

変化というのは常に不可逆であって,「あの頃はよかった」と嘆いても仕方がない。変化を否定し,気づかないふりをするのではなく,積極的に感じ,楽しんだ者だけが,これからの時代を謳歌することができる。変化を楽しむのだ。

成毛眞さんは1955年生まれなので,現時点で65歳です。多くの人が保守的になっていくときに,変化を楽しめるというのは,とても素敵ですよね(こういう人に憧れます)。

 

もちろん,「9割の日本人に英語は不要」など衝撃的なワードがたくさんある成毛眞さんですから(笑),その内容は興味深いものばかりです。

たとえば,あれだけすごい道を歩いてきたにもかかわらず,「仕事人生9割は運だ」といいます。そして,成毛眞さん自身,「運任せで気軽に転職してきた口だ」といいます。

ただ,やはりそんなことないだろうと思います(はい)。

中島聡さんのメルマガの質問コーナーにも「成毛さんのすごさ」というものがありました。

成毛さんに関して、もっとも凄いと思ったのは、主要なOEMメーカーのキーパーソンと心底仲良くになってしまっていたところです。仕事を乗り越えて、他では得られないような強い信頼関係を築いてしまっていて、羨ましいぐらいでした。エヴァンゲリオンで言うところのATフィールド(心の壁)がなくなってしまっているように見えました。

どうやってそんな関係を築くことが出来たのか、私には最後まで理解出来ませんでしたが、成毛さん自身も相手のことが心の底から好きになっていたのだと思います。スティーブ・ジョブズの現実歪曲空間とは少し異なりますが、成毛さんなりの特殊な空間を作ってそこに(本当の意味での)仲間を引き入れてしまう魅力を持っていたのだと理解しています。

週刊 Life is Beautiful 2021年6月1日号

本書に限らず,著書の中にしばしば,「飲む」という言葉が出てきますが。成毛眞さんのコミュニケーション能力は異常なまでに高いなと感じることがあります。ちなみに,本書では,合わない人がいたときにお腹を下す(仮病)話も出てきます(笑)。

 

そもそも起業してお金を稼ぐには普通にやっても20年はかかる。そのことはあのビル・ゲイツと一緒に働いていて身にしみるほどわかっていた。(中略)

だから,会社というのは20年くらいかけないと儲からない。逆にいえば,20年食っていければ,20年後にはある程度儲かっているものだ。

本書では,ビル・ゲイツ氏をはじめ,成毛眞さん自身のこと(投資コンサルティング会社インスパイア)だけではなく,堀江貴文氏(ライブドア事件まで10年くらい),孫正義氏(1980年頃から40年近く)についても言及しています。

こう考えると,今仕事をしている(起業している)人も,そう焦らずという気持ちにもなれると思います。あくまで「焦らず」で,ダラダラしてもよいという意味ではありません。ちなみに,僕はよく「ブラックサンダー(チョコレート菓子)は売れるまでに10年かかった」と言っています。

 

英語学習については,独自の意見を持っている成毛眞さんですが,「スマホで日本語記事を読んでいるだけの人は取り残される」とも言います。

ここで紹介されていたのが,「アルジャジーラ・イングリッシュ」という中東のメディアです。僕も初めて知ったのですが,「世界で一番中立的で事実に基づいたニュースを発信している」とのことです。

 

2020年,仕事も勉強もそのやり方が大きく変わりました。「今まではこうだったのに…」と嘆くのではなく,こんな時代だからこそ,次の一歩を見据えるチャンスだといえます。その指針のひとつとして,本書を参考にするというのは,とてもオススメです。

書名 アフターコロナの生存戦略
著者 成毛眞
出版社 KADOKAWA

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