採用手法もさまざまな言葉が使われることが多くなり,「リファラル採用」や「スクラム採用」などたくさんの言葉が生まれています。正直,私も単語だけ聞いても具体的なイメージがわかないと思うことの方が多いです(笑)。
今回は,そんな中でも最近スタートアップ界隈でよく聞く「スクラム採用」について取り上げていきたいと思います。
スクラム採用とは?
スクラム採用とは,株式会社HERPが提唱する概念で「共通のゴール(=採用活動の目標)」に向けて,全社員が一丸となり取り組む採用方式のことです。つまり,このHERPという採用管理システムを手掛けている会社が提唱しはじめて流行したものといえます。
スクラム採用のポイントは3つです。
①権限委譲
採用活動のフローを分解し,各フローの権限を人事だけでなく現場社員に委譲するというものです。通常,人事がすべてまとめて現場は面接だけという動きが採用では多いですが,スクラム採用では施策の改善から現場社員が権限を行っていきます。
②成果の可視化
採用活動を通して得られた成果を社内の全社員にフィードバックすることで,採用担当者を中心に定期的な振り返りができている状況にします。
「それって当たり前じゃないの?」と思う方もいるかもしれませんが,これが行われている会社は少ないです。たとえば,営業部がWebマーケティング部の細かな数字を把握していないなどです。「結果はなんとなく知っているが,細かな打ち手は把握していない」ということは多いのではないでしょうか?
この「成果の可視化」というのは,細かな施策も把握し,PDCAも現場で回していくという意味合いで使われます。
③採用担当のプロジェクトマネージャー化
上記2点を読んで,「では,人事は何をするの?」と感じる方がいるかもしれません。
スクラム採用では,人事は採用活動における「施策のオーナー」ではなく,採用活動全体の「プロジェクトマネージャー」として機能していきます。採用関連の知識を現場に落とし込み現場の施策の改善案のアドバイスや採用全体の管理,チューニングなど「採用」というプロジェクトを成功させるマネージャーとして活動をしていきます。
スクラム採用のメリット・デメリット
スクラム採用の全体像は掴めたと思うので,メリット・デメリットについても紹介します。
メリット
採用力の向上
スクラム採用により,多岐にわたる媒体(社員紹介/SNS経由等)からの採用に対応する機会が増えることで,現在の採用トレンドに合致した効率的な採用活動が可能になります。また,採用担当者の工数軽減にもつながり,採用活動の質向上に人事が積極的に取り組む余裕も生まれます。
自社にマッチした優秀な人材との出会いが増える
全社的に採用に取り組むことになることで,「採用担当者だけではリーチすることができなかった層」にアプローチすることができるようになります。
また,現場社員自ら「誰と一緒に働くのか」を意識して採用活動に取り組むので,自社にマッチした人材を採用できるようになる確率が高まります。
エンゲージメント向上
「エンゲージメント」とは,社員の会社に対する「愛着心」や「思い入れ」のことです。
採用活動を進めていく過程で,自社について語る機会が増えます。求人票の作成,説明会でのPRなどをおこなっていれば,自ずと社員のエンゲージメントは向上します。その結果,採用も他人事ではなくなるので「採用→教育→早期戦力化」の流れも早くなります。
デメリット
管理する手間がかかる
複数の部署や社員が採用活動に携わるスクラム採用では,どうしても情報管理などの手間がかかってしまいます。採用に関する明確な役割分担やルール,進捗状況の確認などができていないと,かえって採用担当者の負担が増えることになります。責任者と業務の切り分けは明確に行いましょう。
採用に慣れていない社員の意識を変えるのに時間がかかる
採用の業務以外の仕事をしている社員にとって,採用活動を任されるのは負担でもあります。なぜなら,通常業務と並行して採用活動も行う必要があり,新しい知識やスキルも必要になってきます。
当然嫌がる社員も出てくるので,スクラム採用を導入する際には,現場にとってのメリットをしっかりと伝えるなど社員からの理解も重要になります。
まとめ
社内全体を上手く巻き込めれば,スクラム採用は非常に有効な採用手法となります。ただ,現場の力を必要とするものなので,導入初期の採用に対する価値観のすり合わせが非常に大切です。活用する場合は,上手く導入していってみてください。