『ツイッター創業物語 金と権力,友情,そして裏切り』4人それぞれの視点から楽しめるツイッターの歴史

書評

片方の視点から見るとアメリカ西海岸のサクセスストーリーでも,もう片方の視点から見るとまったく別の物語が見えてくるのが歴史の醍醐味です。『ツイッター創業物語』は4人の創業者それぞれの視点から,「Twttr」(当時は子音のみ表記だった)の歴史がわかります。

本書は,自身が起業しているという方なら間違いなく面白く読めるはずです。ベンチャー企業やスタートアップに勤めているという方でも面白く読めると思いますが,「身銭を切っているかどうか」で自分事にできるかどうか立ち位置が大きく変わるように感じます。

ツイッター創業期を知る上で知っておきたいのが4人の登場人物です。

[aside type=”boader”]

  • エヴ:Blogger(のちGoogleが買収)
  • ノア:エヴの向かいに住んでいた荒くれプログラマ
  • ジャック:Twttrの原案。現CEO
  • ビズ:元Google(Blogger部門), 冗談好き, 出世欲なし

[/aside]

このうち,現在のCEOはジャック・ドーシーです。ジャックは一時期ツイッターを離れていたときにモバイル決済サービス「Square」も創業しています。

エヴは「Blogger」の開発者でグーグルに売却した経歴を持っています。ツイッターを退社したあとはブログのプラットフォーム「Medium」を立ち上げました。

このジャックがツイッターを離れて戻り,エヴがツイッターを離れることになるというのが本書の最大の山場となります。この一時離れるというのがスティーブ・ジョブズの境遇に似ていますよね。現にジャックはジョブズに傾倒していた時期があります(生活スタイルも真似ていました)。

ツイッター社は成長と共にエヴとジャックの間に確執が生まれるのですが,その間に入っていたビズというキャラクターも魅力的です。冗談が好きで権力に執着せず,もっとも幸せそうに映ります。

(もうひとりのノアは,ツイッター創業後まもなく追放される)

「ぼくは,ツイッターを電気・ガス・水道のような公共事業として見なしている」

ツイッター社は2006年のサービス開始後,売上がゼロのまま続き(人を集められるので企業価値はあった),初めて売上ができたのはグーグルとビングと契約した2009年のことでした。

ジャック・ドーシーはサービスが開始した1年後,上のように発言しています。現在,ツイッターは大統領が発言するほどの「場」になりました。

「よー,よー,よー」左右に腕をのばして,スヌープがいった。「あれを使ってもいいか?」ターンテーブルを指差してきいた。

ある日,ツイッター社を訪問したスヌープ・ドッグがオフィスに置いてあったターンテーブルを使うと,オフィスが一気にマリファナパーティになったという黒歴史も書かれています(笑)。

本書の著者であるニック・ビルトン(@nickbilton)は,ニューヨーク・タイムズの記者,コラムニストです(2016年退社)。『ツイッター創業物語』は,ニューヨーク・タイムズの「ベストセラーリスト」とウォール・ストリート・ジャーナルの「リーダーズ・チョイス」に選ばれました。

ジャック・ドーシーさんは(日本だと?)キレイに描かれることが多いですが,本書だと逆転したヒーロー像というよりヒールに描かれています(広報の力ってすごいのです)。

書名 ツイッター創業物語 金と権力,友情,そして裏切り
著者 ニック・ビルトン
出版社 日経BP

特集記事

TOP
CLOSE