『異端のすすめ』量をこなして質を上げ,自分にしかない価値を持つ

書評

今でこそ「橋下徹」さんというと,元大阪府知事(または元大阪市長)という印象がありますが,元はというと「っぽくない弁護士」ですよね。例外なく,僕もそんなイメージを持っていたひとりです。

ちなみに,当時,あの茶髪にサングラスの弁護士というのがとても好きでした(笑)。今も昔もダサい人が多い世界できちんとした身なりをしている人は,どこか惹かれます。

そんな橋下徹さんですが,思っているより(?)「質より量」を実行しており,「『計画どおりの人生』なんてない」と言いながらも,その中で「頭ひとつ抜ける方法」を意識しているのがわかります。

どのような働き方,生き方をするのが正しいということではありません。

他人に振り回されることなく,自分自身が「どうありたいか」「どうしたいか」という意志を持って,選択すること,そして挑戦を続け,自分自身が燃焼し尽くした感を持てるような納得できる人生を作り上げることが重要だと僕は思います。

インターネットを覗けば,正社員とフリーランス,持ち家と賃貸など,さまざまなことについて,それぞれのポジションからマウントを取ろうとする傾向がありますが,そうではないですよね…。

そして,自分自身が求めるものになるための考え方のきっかけが本書に詰まっています。

 

まず,かんたんに橋下徹さんの経歴を追ってみると,25歳で司法試験に合格,2年間の司法修習を受けた後(現在は1年間),大阪の法律事務所に就職,約1年後に独立しました。

その後,タレント,大阪府知事,大阪市長,国政政党代表を経て,現在に至ります。

たしかに,経歴ひとつひとつ取っても十分素晴らしいですが,大切なのは,「自分にしかない価値」を持つことだといいます。具体的には,前述の経歴のような「強みの掛け算」です。

面白いなと思ったのは,橋下徹さん自身,「弁護士として自分が突き抜けているとは思っていません」と書いています。ただ,それを組み合わせることが大切だといいます。

ひとつひとつは,そこまで突き抜けていなくてもかまいません。「何も努力していない人よりは格段に抜けているけど,誰も到達していないレベルというわけではなく,同じくらい突き抜けている人は結構いる」くらいの強みを「複数」持てばいいのです。

それでは単なる「器用貧乏」で個人の価値にはならないんじゃないかと思われそうですが,「数」の力は侮れません。ひとつひとつの強みは,他にも同じくらいのものを持っている人が結構いたとしても,複数の強みを掛け合わせることで「自分にしかない突き抜けた価値」になるのです。

本書では,この「数」というのがよく出てきます。

自分のウリに基づいた仕事は,圧倒的な量をこなせば,自然と上がっていきます。すなわち,ウリに磨きがかかってくる,ということです。質は量をこなすことによってこそレベルアップするものであり,質だけをレベルアップするのは非常に困難なのです。

大阪府知事のとき,記者の質疑に対応する「ぶら下がり」も,毎日,質問がなくなるまでやっていたというのは驚きました。

 

本書は,政治家としてではなく,イチ仕事をする人として,橋下徹さんがどのようなことを考えてきたのかということがわかる一冊です(ここまで「大阪都構想」に言及せずに書けるほど)。

さて,次は,PHP新書の『実行力』「交渉力』『決断力』の三部作も気になります。

書名 異端のすすめ
著者 橋下徹
出版社 SBクリエイティブ

特集記事

TOP