自社でサービスを展開している中で,「買ってくれないノンユーザー層」と「買ってくれても年1,2回程度のライトユーザー層」が大半を占めています。
『“未”顧客理解 なぜ「買ってくれる人=顧客」しか見ないのか?』では,買ってくれないノンユーザーやライトユーザーをどのように理解し,顧客にすればいいのか,データがないこれらの買ってくれない未顧客に対して,自社ブランドに興味を持ってもらうための考え方や施策が紹介されています。
未顧客にあわせたブランドを再解釈する
本書では,「買ってくれないノンユーザー層」や「買ってくれても年1,2回程度のライトユーザー層」「平均的なターゲット像に当てはまらない少数派の顧客」を総じて「未顧客」と呼んでいます。
どんな企業であっても,事業の成長には未顧客の新規獲得が必要です。しかし,未顧客は自社ブランドに対して興味もなく,購買行動も起こしていないためデータがありません。データがないと「どうしたら興味を持ってもらえるか,買ってもらえるか」という施策を考えることも難しくなってしまいます。
そこで,未顧客の行動を観察したり,インタビューをしたりすることによって,「現在の生活文脈を表す物語データ(ナラティブ)」が得られると本書では語られています。そうした物語データから未顧客の行動パターンや思考の規則性を探り,それに合わせてブランドを再解約することで,未顧客に興味を持ってもらうための打ち手を考えていく必要があります。
日本のモノ作りは質が高いので,「プロダクトアウト」という習慣や思想に逆らわないように商品やサービスを顧客価値に再解釈する仕組みがあれば,強いブランドはつくれるといいます。
未顧客を5原則で理解しよう
未顧客に興味を持ってもらうためには,「広告で何をどう伝えれば良いのか」「製品でどんな体験を実現すれば良いのか」という施策への落とし込みが重要です。それを構築する上で本書では「未顧客の5原則」が紹介されています。
①文脈が変われば意味が変わり,意味が変わると価値も変わる
モノやサービスは文脈次第で価値が変わります。モノは生活文脈の中に置かれ,人はその文脈込みでモノの意味を評価します。したがって,無関心な未顧客を動かすには,文脈と意味を変えることが重要になると語られています。
②未顧客は本来戦うべき市場を見通すための「レンズ」である
未顧客は現在の市場から別の市場機会を見通す「レンズ」のような役割を果たしています。未顧客は,その市場でいう平均的なニーズの顧客でない可能性が高いので,未顧客開拓をしていくことで,別の市場にいる顧客も見渡すことができるようになり,自社サービスの見せ方が可能になります。
③行動の背後にある欲求,抑圧,報酬から「顧客の合理」を理解する
行動観察やインタビューを通して未顧客のデータを取得していきます。そこから,その文脈で生活している未顧客の行動パターンや思考の規則性を探り,それに合わせてブランドを再解釈していくと,未顧客に行動パターンを理解できるようになります。
④「ブランドの特徴」×「顧客への報酬」=文脈最適のベネフィット
未顧客は,その場で思い付いたブランドの中から,もっとも簡単に手に入れられるもので済ませることが多いです。ブランドは消費者に「考えさせない」ことが重要で,いかに自社サービスが自分にメリットがあると思ってもらうことが重要となります。
⑤モノの売り方ではなく,モノが使われる行動の増やし方を考える
無関心や興味がないことに理由や原因は存在しません。ファンやヘビーユーザーがブランドに感じている魅力をそのまま伝えても,未顧客が動くわけではないことが多いです。したがって「どうすれば好きになってもらえるか」ではなく,「どうすればブランドを利用するという行動が増えるか」を考えることが重要になります。
まとめ
今回は未顧客理解について読んだ内容を共有しました。自社のサービスも顧客に合わせた見せ方で購入してもらえる顧客の層が大きく変わります。幅広い顧客のニーズに答えられるようにブランディングすることが重要だと感じました。
書名 | “未”顧客理解 なぜ,「買ってくれる人=顧客」しか見ないのか? |
著者 | 芹澤 連 |
出版社 | 日経BP |