『夜を彷徨う 貧困と暴力 沖縄の少年・少女たちのいま』性を消費しようと大人が近づくSNSの闇

書評

沖縄に行ったときの楽しみのひとつが,書店を見ることです。

那覇の中心街・国際通りの近くには,リウボウブックセンター,ジュンク堂書店があります。地域に根ざした書店の多くがそうであるように,これらの書店でもご当地の本(つまり「沖縄」)が多く陳列されており,それらを見るのも沖縄滞在中の楽しみのひとつだったりします。

夜を彷徨う 貧困と暴力 沖縄の少年・少女たちのいま』は,琉球新報の連載「彷徨う——少年少女のリアル」が元になっています。

第1章では,買春,援デリ,裏アカ,違法薬物といったものが氾濫するSNSの闇に触れ,第2章では,そこから沖縄の性産業に入っていった人たちの現実が語られます。

これらのテーマに興味を持ったら,同じく沖縄の裏側を描いた上間陽子さんの著作『裸足で逃げる 沖縄の夜の街の少女たち』も楽しめるはずです。

 

SNSの中には,保護者らには見えない闇が存在する。その闇の中では「知らない大人」と会うことに恐怖心のない無防備な10代の少年少女らと,未成年を「性の対象」として消費しようと近づく大人のいびつな世界が広がっている。

このあたりは,もう沖縄「だけ」の問題ではなくなっていますよね。

沖縄の問題として取り上げられることの多いもののひとつに「連鎖する貧困」があります。本書の言葉を借りると「壊れた家族」があり,居場所がなくなった少年少女たちが「SNS」を使って心の拠り所を探し,そこに付け込む大人たちという図式があります。

 

ある日,仕事を終えたタカコの手元に残ったのは500円だった。客1人の相手をして,自分の取り分は2,500円。そこから,自宅までの送迎代として店に2,000円を支払った。

読むだけで辛くなるエピソードが続きます。

こういう現実があるのはなにも沖縄だけではないことはわかります。それでも,これらはたしかに現実にあることのひとつで,好きな沖縄で自分は何ができるのかなと考えさせられる一冊です。

書名 夜を彷徨う 貧困と暴力 沖縄の少年・少女たちのいま
著者 琉球新報取材班
出版社 朝日新聞出版

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